■ 星野 智幸 / 植物診断室
主人公・寛樹に、風に乗ってふわふわと移動する種子や胞子のイメージが重なった。
そして、物語の中に散らばされている戦争のイメージも心に残った。
戦争のイメージと、父性のイメージの同調。
産めよ増やせよ、スギノコのように。
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夫でもなく、父親でもない“大人の男性”の役割とは――
散歩が生き甲斐の独身男・寛樹は、ある女性に「夫でもなく、父親でもない役割」を求められた。家族や婚姻制度に一石を投じる問題作。(出版社 / 著者からの内容紹介)
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寛樹が恐れる「スギノコ」、<小さいんだけどものすごくたくさんいて、あっという間に人を食べちゃう>「スギノコ」は、旧態以前とした父性の象徴なのだろうなあと思う。
作中に出てくる唱歌「お山の杉の子」で歌われるように、男は「強く大きく たくましく 」あらねばならないという認識。暴力にエクスタシーを覚える心性。
そんな父性を嫌悪し、独り身を通してきた寛樹だが、幹子とその子供たちと新しい関係性を模索していく中で、とうとう自分の中のスギノコに直面することになる。
拒否しながらもとらわれてしまいそうになるのは、もしかしたら根をおろすべき土壌がすでにそういう形に作られているからなのかもしれない。
予め用意された枠組みと、その強制力―。
そんなことを考えて、ちょっと切なくなりながら読み進めたら、最後のシーンは、根をおろすということの新しい意味を感じさせるものだった。
土壌が作られさえすれば、地上21階のマンションのベランダにも、植物は根づくのだ。
この小説好きだな。図書館で借りた本だけど、購入を考えてもいいなと思った。
■参考サイト 日本軍歌保管庫「お山の杉の子」
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